【お客様のお悩み】20代後半 親に敷かれたレールで生きていいの?

初めてお会いした時に、非常に緊張しているのがこちらに伝わってきました。

一言ふたこと言葉を交わしただけで、折り目正しい真面目さが伝わってきます。

この青年をDさんとお呼びします。

□親の敷いたレールを走ってきて

Dさんは、その真面目な性格もあって、幼い頃から親の言うことを聞く子でした。

反抗期もなく、親の望む仕事に就くために大学に進学。

その仕事とは、国家試験にパスすることが必要で、一般的に『すごい』と言われるようなお仕事。

名誉だけでなく、地位も収入も得られるようなものです。

Dさんの父親と、その兄にあたるDさんの伯父さん、そしてDさんには祖父にあたる人が同じ仕事をしていて、地元では名が知られているようです。

そんな父親のような立派な人になりなさいとDさんは周囲から言われて育ちました。

中学、高校、大学と、親の望む学校へ進学し、国家試験もパスしました。

めでたく父親と同じ仕事にも就くことができましたが、それから数年が経ち仕事にも余裕ができてくると、自分が何をしたいのか分からなくなってしまいました。

というのも、同僚や後輩は仕事に夢や目標を持っているのに対して、Dさんにはそれがないのです。

もちろん、Dさんも誠実に仕事をしていますが、仕事に対する熱量が他の同僚や後輩たちと違いすぎて、職場にいるとDさんは肩身が狭く感じるのでした。

それに加えて、同僚や後輩は趣味や交遊が広く、勉強しかしてこなかった自分がとてもつまらない人に思えてしまっていたのです。

あと数年で30代という年齢に差し掛かったのに自分の未来が見えず、誰かに話してスッキリするならと思って、レンタル彼女を利用をしてくれました。

□レールを進むことの迷い

学校ではいい成績を残し、親の望む通りに就職をし、そこでも真面目にお仕事を続けて……と、Dさんはとても立派に生きて来られました。

『自分には何もない』とDさんはしきりに言っていましたが、毎日学校へ通う、成績をキープする、難しい試験に合格する、仕事で大きな問題を起こさない……ということが続けられるなんて、とても優秀な人です。

それなのに、Dさんが急に劣等感を感じ出したのは、同僚や後輩と『比べて』しまったから。

更には、その比べてしまう要素が『趣味がない』『ディズニーランドへ行ったことがない』『お台場に詳しくない』『流行りのスイーツを知らない』『ダーツをしたことがない』『コンサートに行ったことがない』『カラオケを歌えない』……等、遊びを知らない自分はつまらない人間だと思ってしまったのです。

遊びを知らないからといって、Dさんが人としてつまらないわけではありませんが、子供の頃から勉強しかしてこなかったDさんには、楽しい人に対するコンプレックスが強かったのです。

それならと、デートの度にDさんが行きたかったことをし、やりたかったことをやりました。

友だちと遊ぶ機会の少なかったDさんには、初めて行くところばかりで、まるで子供に返ったように本気で遊びました。

けれども、やりたいことを半分くらい消化した時に、Dさんはただ遊ぶのではなく、『もし、自分がそこに転職したらどうするか』と、自分の生きたい道ややりたいことをシュミレーションし始めました。

『このお仕事は魅力があるけれど、自分にはできない』
『今すぐにでもできる仕事かもしれないけれど、10年後が想像できない』
『あのスタッフはつまらなそうに仕事をしている』
など、世の中には色んな職業があって、それに従事する人がいることに初めて気がつきました。

今まで勉強ばからりだったDさんは、世の中にどんな仕事があるのかなんて興味がなかったのです。

□仕事とは

他を知ることでDさんは、自分の仕事の素晴らしさを再認識したようです。

たしかに、Dさんのお仕事は、Dさんがやりたくて目指した仕事ではありません。

けれども、誰もができる仕事ではないということと、困っている人の役に立つとても尊い仕事なんだという誇りを思い出したのです。

そして、子供の頃に働く父親の姿を見て『あんな大人になりたい』と思った記憶が蘇ったのでした。

Dさんは職場を変えることはありませんでしたが、職場を父親と同じ場所に移しました。

父親の元で修行をするという形で、いずれば父親の跡を継ぐという目標ができました。

親に敷かれたレール通りに進むことになりましたが、親から言われたのではなく、自分で決断したというのが自信にもなりました。

そして、人生の目標ができると、自分がつまらない人間だと思っていたことなど、どうでもよく感じるようになりました。

自分は自分でしかないのだから、人からどう思わても構わないと思えた時に、コンプレックスから解放されたのです。

それと同時に、子供時代への未練も立ち切ったように見えました。

Dさんのやりたいことは全部消化されないまま卒業していきましたが、早々に(といっても2年はかかりましだか)進む道が決まってよかったのではないかと思います。

未消化分のやりたいことは、パートナーが出来たときに一緒にやっていけたら幸せだろうと思いました。